Muscle Shoals

Sonic Research

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今回の渡米レコーディングで持って行った機材の中に、Sonic Researchの「Turbo Tuner ST-200」というものがあります。これは何かというと、その名の通り「チューナー」、つまり楽器をチューニングするための機械です。ミュージシャン(というより弦楽器奏者?)なら誰しも自分のチューナーを持っているので、プロデューサー兼レコーディングエンジニアといった立場の僕がそんなものをわざわざ持ち歩く必要なんて無いんです。普通に考えれば。

ところが、今回のプロジェクトは自宅にあるRhodes、Wurlitzerといったエレピに合わせて、全てA=441Hzで録音しています。グランドピアノをスタジオで録音するときも、必ず事前に調律を入れてピッチ上げを行ないます。(もっとも、最近はA=441Hzが主流になりつつありますが・・・)

普通チューナーはA=440Hzでセッティングされていますので、ミュージシャンが普段使っているチューナーを、説明書無しですぐにA=441Hzにキャリブレイト出来るかどうか(「このボタンとこのボタンを同時に長押しするとキャリブレイション設定変更が出来る」というような、パッと見では設定方法がよくわからないチューナーも世の中には多いのです。余計な事に時間使いたくないですからね。)、そしてミュージシャンの普段使っている機材の設定を自分の録音のために変えさせるのはちょっと・・・という気持ちもあり、今回参加していただいたミュージシャンには全てこのチューナーで調律してもらったというわけです。

で、何故このチューナーか。

これはストロボチューナーといって、通常のチューナーよりも遥かに高い精度でチューニング出来るものなのですが、このチューナーでキチンと調律すると、本当に楽器が変わったように「鳴り」が良くなるんです。特にギターやベースはそもそもがピッチの不安定な楽器なので、調律は本当に大切。これでバチッと調律した後にコードを鳴らすと、本当にうっとりする程美しい・・・ましてやたくさんの楽器が重なってくるレコーディングでは、それぞれの楽器をシビアに調律しておかないと、曲が持つ倍音がめちゃくちゃになってしまう可能性もあるので、僕はチューニング・調律をとても重要視しています。

とはいえ僕がストロボチューナーに興味を持ったのは、やっぱりJames Taylorの影響。武道館最前列でギターテックがPeterson(デジタルストロボの草分け的メーカー)のStrobo Stompというチューナーを使って調律していたんです。James Taylorのやっていることは何でも真似したがる真似っこ小猿の僕は、早速Petersonの製品についてリサーチを開始したのですが、ストロボチューナーは高い・・・定価で5万円とかするんです(!)

それで色々調べているうちに辿り着いたのが、このSonic Research「Turbo Tuner ST-200」。今は日本でも売られているかもしれませんが、そのときは代理店が決まっていなかったようで、個人輸入しました。アメリカの製品です。たったの1万円ちょっと。それで、Petersonを遥かに上回る0.02セントの精度、なおかつボディが小さい(Peterson Strobo Stompはデカい)!もちろんトゥルーバイパス!

あまりに正確過ぎて、ヴィンテージの楽器でペグがオリジナルのままだと(つまりギア比が高く無かったりすると)、調律するのにとても手間取りますが・・・(笑)きちんとしたペグであればまず間違いありません。

日本でのレコーディングセッションでこのチューナーを使っていただいた中村’Jizo’敬治さんには大変気に入っていただけて、メーカー・型番などをメモして行かれました。(弦が多く、しかもペダルでベンドするペダルスティールギターにはまさに持ってこいのチューナーですよね!)そして、Muscle ShoalsレコーディングでもDavid Hoodがセッション終了後同じようにメーカー・型番をメモ、「絶対買う」と言って帰って行きました。ガジェット大好きなWill Leeも当然大興奮、「日本のテクノロジーはやっぱりハンパ無いな!!!!」「いや、アメリカのメーカーです(笑)」。

レコーディング中に(というよりおしゃべりを終えてセッションに戻った際に)、何故か突然A=440Hzに戻ってしまうという事故がありました。Willがベースを弾き始めた瞬間レコーダーをストップさせて「なんかベースの音低くない?」と言うのでチェックしたところ、セッティングが変わってしまっていた事に気付いたのですが、ベースという楽器で1Hzの違いにすぐ気付くなんてさすがの耳・・・僕は全然気付きませんでした(笑)

2ヶ月近く使っていて一度も設定が勝手に変わる事なんて無かったので首をかしげつつ再設定している僕に、Willが「アメリカメイドだからね」と(笑)

そしてWillとのセッションではおしゃべりの時間が長過ぎ、うっかりその間ずっと電源を入れっ放しにしていたので、電池が切れてしまったんです。電池を入れ替えて「さてチューニング」という段になって、Willが「おい、これA=441のキャリブレイション設定記憶してるぞ!電池交換したのに!フラッシュメモリでも入ってるのかな?」と。

そう、このチューナー、こんなに安いのに、電池切れでも設定を記憶しておいてくれるんです・・・僕もこのとき初めて気が付いたんですが、凄い!

Willももちろんお買い上げ決定の模様でしたが、Willはそれぞれのベースにそれぞれのギグバッグを用意していて、さらに全てのギグバッグにチューナーを入れているんです。今使っているのはBOSSの定番TU-2、15台くらい持っているそうで、いくらSonic Researchのコストパフォーマンスが良いとはいえ、全て取り替えるのは結構お金かかるなぁと思案顔のWill。しかも急に、「あれ、そういえば俺BOSSのエンドーサーだからステージでSonic Research使ったらダメかも!」と。エンドースはややこしいですね。

と、いうわけですっかりSonic Researchの回し者状態ですが、欠点をあげるとすれば・・・

1.マイクが付いていないので、ピックアップのついていないアコースティック楽器のチューニングには、チューニング用クリップマイクが必要。
2.マイクを内蔵していないのに、ケーブルを挿していない状態でもスイッチを押すと電源が入る。つまり、バッグに入れている間に何かの拍子でスイッチが押されると、そのまま電源が入りっぱなしになってしまう。(Willもこの点については「リスキーだ」と。)

しかしその反応の速さ、正確さは唯一無二です。「チューナーで調律した後に、最後はリファレンスコードを鳴らして自分の耳を頼りに最終調整している」、といった人には是非試してみて欲しい逸品!

2010/06/23 11:56 | Category:James Taylor, Muscle Shoals, REC日誌, Will Lee, 楽器

アラバマ最終日

最終日といっても、2泊3日の弾丸旅行だったんですが・・・

前日はレコーディングの疲れですぐに眠ってしまったので朝8時に起床。朝食後Dickが連れて行ってくれたのは、”Alabama Music Hall of Fame”。アラバマ州音楽の殿堂。
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アラバマは本当にたくさんのアーティストを輩出した土地として知られていますが、Jimmy Hughesもアラバマの人だったんですねぇ・・・
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僕が彼の音楽と出会ったのはVee Jay(シカゴのレーベル)からリリースされた『Steal Away』というアルバムだったので、てっきり北の人かと思い込んでいました・・・

館内入り口の『Walk of Fame』には、もちろん今回レコーディングに参加してくれたDavid Hoodの名前も!
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そしてThe Decoysのライヴで会ったDonnie Frittsも発見。
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館内にはその名も「ALABAMA」というバンドが実際に使っていたツアーバスなんかも展示してあって、中に入ることが出来るんですが、なんと2段ベッドが3つ、3段ベッドが1つあり、計9人が眠れるようになっているんです!ラグジュアリーなソファコーナーもあって、凄かったー。こんなバスでわいわい全米中をツアーしたんでしょうか。楽しそう・・・

そしてDickが手がけたMuscle Shoals Rhythm Sectionコーナー!
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4人が実際に使用していた楽器が飾ってありました。

で、Hall of Fameを一通り見終えると、フライトまでかなり時間が余っていたので、Dickの提案で昼ご飯を食べることに。近くに美味しいメキシカンレストランがあるというのでトライしてみました。頼んだ料理は、もちろんDonnie Frittsにちなんで”Huevos Rancheros”!!凄く美味しかったー!!

ご飯を食べてもまだ時間が余っていたので、これまたDickの提案、「FAME Studioに寄ればTomがいるんじゃないかな?」ということでFAME Studioに立ち寄ることに。(オリジナルのFAME Studioから場所は移転しています)
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すると、見事にTom Swiftにお会いすることが出来ました!「Jayは僕の師匠だよ」と話すTom、FAME Studioの中を全部見せてくれました。下の写真はStudio A。先月立ち寄ったSunset Sound同様、歴史の重みが凄いー・・・
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Wurlitzer(多分140か140B)とHammond B-3が仲良く並んでいたのでパチリ。
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WurlitzerのコンディションをTomに尋ねると、なんと「試してご覧!」と弾かせてくれました!FAME Studioで”You Don’t Know Me”を弾き語り〜♪

そんなこんなでTomとお別れして、Dickに空港まで送ってもらい、Dickともお別れ。またの再会を誓って(次はFAME Studioで一発録音!?笑)プロペラ機に乗り込んだのでした。

2010/06/14 03:57 | Category:Muscle Shoals, REC日誌, 日々の色々

Muscle Shoals詣で

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アーティストなら最低でも一生に一度はやらねばなりません、Muscle Shoals詣で。残念ながらMuscle Shoals Rhythm Sectionが4人揃うことはもうありませんが(Barry Beckettが2009年逝去・・・ご冥福をお祈りします)、今回のMuscle Shoalsレコーディングでは、Muscle Shoals Rhythm SectionからDavid Hood、そして元Cowboyで現在The DecoysのScott Boyerに参加していただきました。

David HoodはAretha FranklinからPaul Simon、James Brown、Wilson Picket、Bob Scaggs、Linda Ronstadt、Willie Nelson、Albert King、Art Garfunkel、Bobby Bland・・・有名どころをちょろっとあげただけでもこれだけの量になるほどの、まさにアメリカンポップミュージックの歴史を作り上げて来た伝説的なベーシスト。

そんな凄い人に弾いていただけるなんて〜・・・と言いつつ、やっぱりなんだかんだでどことなく偉そうな臼井健(笑)。
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でもいざレコーディングが始まれば2人とも真剣そのもの!
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今回意外な発見だったのは、David Hoodのような熟練のスタジオミュージシャンは楽譜やコードチャートさえあればツルッとそつなく弾けちゃうのかと思っていたんですが、楽譜よりも「歌詞」で「今自分が曲の中のどこにいるのか、何をやるべきなのか」を把握しているようなんです。僕の曲は全て日本語詩なので・・・大変悪戦苦闘させてしまいました。トホホ、やっぱり「歌伴のプロ」というだけあります。世の中歌や歌詞なんか全然聞かないミュージシャンの方が圧倒的に多いというのに・・・

ところで今回ホームスタジオを提供してくださったDick Cooperは元々ジャーナリストであり写真家なので、レコーディング風景をたくさん撮影してくれました。良い写真がたっぷりあるので、そのうち写真館にまとめてアップしようと思います。

レコーディングを終え、Dickのレコードコレクションの前で記念撮影!
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Davidのレコーディングが終わったところでScott Boyer登場。”Please Be With Me”がEric Claptonにカヴァーされたことで一番知られていますが、僕は去年(2009年)のDonnie Fritts来日時に彼のいぶし銀のギターにノックアウトされてしまいました。

レコーディング前の準備の様子。
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Scottにお願いした曲はシンプルなブルースだったので、こちらはあまり歌詞に悩まされることはありませんでしたが、それでもあれやこれやとディレクション。
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無事に1日でレコーディングを終えることが出来ました!この日は朝9時に起きて準備を始め、11時からレコーディングを開始したのですが、全て終わったのが18時。日が暮れる前にどうしても行きたい場所があったので、後片付けをしてすぐにDickに連れて行ってもらいました。そこで撮ってもらったのが下の写真。

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そう、3614 Jackson Highway、Muscle Shoals Sound Studios!Cherになりきって写真撮影(笑)

その後は、なんと40年代からあるというハンバーガー屋さんへ夕飯を食べに行きました。本当にバックトゥザフューチャー・・・
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ここではDickの昔からの友人がカラオケで生歌を披露していて、僕が店に入った時に歌われていたのが”Always on My Mind”!なんて保守的な!(笑)レストランの営業で必ず”Unchained Melody”を歌う僕は、ようやく仲間を見つけたような気がして嬉しかったのでした・・・

Dickの家に戻ると、あまりに疲れていたのか、22時には既に大爆睡していたようです。記憶が全くありません。充実した一日を終え、大いに眠りました。

2010/06/13 06:13 | Category:Muscle Shoals, REC日誌, 日々の色々

The Decoys @ Sidelines, Muscle Shoals

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今回のMuscle Shoalsレコーディングで、運転から宿泊、スタジオの提供、ミュージシャンのスケジュール管理まで全て取り仕切ってくださったDick Cooperに連れられて、The Decoysのライヴへ!

すると、The Decoysの面々だけでなく明らかに見覚えのある顔が・・・

そう、Donnie Fritts!! I love Chicken!!

みんなとっても親切に迎えてくれて、そして何よりDonnieがとても元気そうで本当に嬉しかった!Donnieが飛び入りで歌ったり、僕が飛び入りでギターを弾いたり(ん?)、とても楽しいギグでした。やっぱりThe Decoysは本当に良いバンド。こんなに素晴らしいバンドなのに、Muscle Shoalsにはどうやら「ライヴミュージックシーン」のようなものががあまり無いみたいで(レコーディングスタジオは星の数ほどあるというのに・・・)、お客さんが結構少なかったのが残念。Dickと、「こんなに良いバンドがプレイしているのに客が30人ってどういうこっちゃ!」と言い合っていました。でもいつもこんな感じらしく、この街ではしょうがないみたい。

はるばる日本からやって来た僕のことを思ってか、”Pride and Joy”が始まるとScottが突然僕をステージに呼び・・・写真の通り彼のテレキャスで飛び入り参加することになってしまいました。(写真はDick Cooperが撮ってくれました!)エレキはもう随分長いこと弾いていないので全然弾けなかったけど(ちゃんと練習しなきゃな・・・)、The Decoysと2曲も演奏出来るなんて最高に幸せでした。どこの馬の骨とも知らないのに気遣ってくれて、優しいなぁ・・・計3ステージで、最後のステージではQuintin Berryというベーシストが飛び入り。もの凄く変な持ち方、弾き方をするんだけどとても良い音、グルーヴ。終演後声をかけてくれて、レコーディングでこっち来てるんだよって言ったら「誰とやるの?」と聞かれたので、「NYではWill Lee、ここでDavid HoodとScott Boyerとだよ」と言うと、なんとWIllの知り合いでした!

ちなみにMuscle Shoalsに発つ前日、Jay MessinaにMuscle Shoals行きの話をすると「え。今ちょうど友達がそこで働いているよ。」と言うんです。Tom Swiftというグラミーを2つも取って7回もノミネイトされているレコーディングエンジニアで、なんとFAME Studioにチーフエンジニアとして招かれているとのこと。Jayは「Tomは凄く良いドラマーでもあるんだよ!」と言っていましたが・・・

なんと、Tom SwiftはしょっちゅうThe Decoysで叩いているそうなのです!!Dickに聞いたら、「毎週Sidelinesに来てThe Decoysで数曲叩いているから、今日来なかったのが不思議なくらいだ」と。

アメリカでもミュージシャン、音楽関係のつながりってやっぱり狭いんだナァ・・・

ちなみにThe Decoysのライヴが行なわれたSidelinesという場所は、極々普通のアメリカのダイナーといった趣き。水曜日の夜にレギュラーで出演しているようで、土曜日の夜はカラオケ大会をやっているみたいですね(笑)

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2010/06/11 11:42 | Category:Muscle Shoals, REC日誌, ライヴ雑感, 日々の色々